Houdini アーティストインタビュー(Anastasia様、堀川様)


こちらの記事では、Anastasia Opara 様、堀川 淳一郎 様へ、Houdiniに関するインタビューを行わせていただいた際の内容をご紹介致します。

 

インディゾーン(以下、IZ):
Anastasia Opera 様、今回のセミナーのために日本にお越し頂きありがとうございます。昨日のCEDEC 2018(8月24日)セミナーは大好評でした。
本日は、弊社のお客様とユーザーがHoudini又はAnastasia様のお仕事に興味をお持ちですので、お話をお聞かせ頂けますでしょうか。 さらに、日本でHoudiniによるアルゴリズミックデザインを推進されている堀川 淳一郎 様にもお越し頂き、対談形式で色々なお話を伺いたいと思います。

 

それでは、Anastasia様にお聞きします。

IZ:
Q1. 初来日ということですが、日本の印象はいかがですか?

Anastasia様:
実はアジア圏を訪問すること自体今回が初めてなのですが、非常にクールですね。来日してからの大半は京都に滞在したので、私の強い印象は京都についてになるかと思います。そこは異なる多様なものが複数共存するタペストリーのようなもので、それぞれが興味深く混ざり合っていました。私が特に魅力を感じたのは、狭い路地です。隣り合った非常に古い建物にワイヤーが巻き付いていて、まるで建物を巻き込んでいるようでした。それは非常にクールで、西洋で今まで見た全てのものとは全く異なるものでした。これこそが多数のデジタルアーティストが再作成したいインスピレーションだと思うので、端的に答えるならば、私の印象は圧倒的に好印象です。

 

IZ:
Q2. 市場には多くのDCCアプリケーションがありますが、Houdiniを使用することになったきっかけを教えて頂けますか?

Anastasia様:
私がHoudiniに魅了されたのは、あらゆるものを接続できるという能力です。頂点の位置情報からカラー、カラーからサウンド、ドラムマシーンからキューブへと自由自在に接続でき、私が求めていた創造性と自由度がありました。他のDCCアプリケーションと比較すると、チームが抱えている問題を解決できる、ある種の魔法のようなものに感じました。

 

IZ:
Q3. EA SEEDについてお聞かせください。どのようなことを行う部署(ディビジョン)でしょうか?

Anastasia様:
SEEDは、Electronic Arts社の研究部門です。弊社の目標は、漠然としたインタラクティブなエンターテインメントやクリエイティブなアーキテクチャを探求する未来を構築するための手助けをすることです。弊社には、ディープラーニングやレンダリング、ゲームデザインアートなど様々なバックグラウンドを持つ仲間が集まって一緒に作業を行うチームが複数あります。部門全体に貢献するために、それぞれが非常に異なる興味深い視点を持っているので、非常に素晴らしい経験をしています。

 

IZ:
Q4. その中でAnastasia様は、どのような研究開発を行っているのでしょうか?

Anastasia様:
私の公式な役割はプロシージャルアーティストで、コンテンツ作成の新しい方法を模索しています。現時点では、プロシージャリズムとディープラーニングのinter disciplineについて取り組んでおり、これら2つのフィールドをどうやって融合させるかを調べています。これが、私の主な役割です。

 

IZ:
Q5. Anastasia様の職種について興味があります。プロシージャルアーティストとは、最近出来た肩書でしょうか。日本では、馴染みのない職業だと思いますので、ぜひお聞かせ頂けますか?

Anastasia様:
プロシージャルアーティストを公称している人は、EA社内にも他に誰もいないと思います。EA社でプロシージャリズムを担当している大半の人はテクニカルアーティストだと思います。ですので、EA社にとっても新しい肩書であると言う人もいるでしょう。個人的には、テクニカルアーティストよりもプロシージャルアーティストのほうが好きです。なぜなら、アートが中心にあって、アーティストであることが前提でありつつも、ワークフローを高めるためにプロシージャルを使うからです。私にとっては、テクニカルアーティストとプロシージャルアーティストの間には、違いがあります。西洋においては、テクニカルアーティストはアーティストを支援する役割というのが通常ですので、私にとってこの2つの役割には違いがあるのです。

 

IZ:
Q6.プロシージャルアーティストとテクニカルディレクターはどういう違いがありますか?

Anastasia様:
テクニカルディレクターというのは、何かを指揮して技術的な面を管理する人です。その一方プロシージャルアーティストは、アートの側面に責任を持ちながらもプロシージャルツールキットを保有し、必要があればツールを作成することができる人のことです。これは珍しい役割で、実現の必要性に基づいて自分自身のためのツールを非常に迅速かつ即座に作成することができ、他の人に依存しないからこそワークフローを自身で確認することができるアーティストです。そして、必要があれば他者と協力するためのコミュニケーションチャネルも用意されていますが、少なくとも本来テクニカルディレクターが行うような領域を自分たち自身で面倒をみることができるので、その点ではとてもパワフルです。

 

IZ:
Q7. ゲーム制作の中で、Houdiniが使用されることによって効率化されるものは何でしょうか?

Anastasia様:
ゲーム制作におけるHoudiniの特徴は、アーティストが独自のツールを作成できることだと確信しています。アーティストは、自分たちにとって必要なものは何か、どんなタイプのワークフローが必要かを非常によく理解しているので、エンジンの実装に長時間かけることなどを気にすることなく、素早く自分のツールを作成することができます。例えば、これまででしたら、何か作業上の問題でワークフローが固まってしまって戸惑うようなことがあった時、その解決には非常に長い時間を要しました。しかしHoudiniを使うと10分で解決策となるツールを作り上げることができます。繰り返しになりますが、アーティストがソフトウェアのエンジニアに依存せずに作業することで、より生産性が上がるので、非常にパワフルだと思います。

 

IZ:
Q8. EA SEEDの中で、Houdiniは、どのような位置づけのツールになりますか?

Anastasia様:
例えば、異なるエージェントとのリアルタイムレイトレーシングを探求していた弊社の最近の「PIKA PIKA」プロジェクトでは、プロシージャルレベル生成のためにHoudiniを使用しました。そして、レベル生成の時点で興味深かったのは、リアルタイムレイトレーシングとレベル生成を、自分側とソフトウェアエージェント側の両方に合わせなければならなかったことです。例えば、セットドレッシングは、別のチームも重要なゲームの要素に触れられるようエージェントを抽象化しないようにします。このために私たちはこのプロジェクトでHoudiniを使いました。

個人的には、R&Dを行っていた時、ディープラーニングアーキテクチャをテストするために合成データの生成でHoudiniを多用しました。データセット取得の工程は長いので、Houdiniを使用することに満足でした。大変かもしれませんが、独自のものを作成できればより高速化が実現できますし、データセットに何が必要かを正確に定義し、いくつかのアイデアがうまく動作するかどうかを直ぐにテストすることができます。そしてより少ない反復作業は素早い上にクオリティも向上します。Tomasz(EA社の同僚で、CEDEC2018の登壇者)が講演でも話したように、反復作業が重要です。Houdiniは、素早い反復を可能にしてくれると思います。

 

堀川様にお聞きします。

IZ:
Q9. Houdiniを使用するようになったきっかけをお聞かせいただけますか?

堀川様:
私がHoudiniを使い始めたのは去年の夏頃ですが、プロシージャルシステム自体はRhinocerosとGrasshopperというツールを介して、主に建築業界にて10年程使ってきました。 ただこのツールにはいくつかデメリットがありました。Rhinocerosはどちらかというとサーフェスベースの3Dモデリングシステムなので、メッシュジオメトリやタイムラインに基づいた生成的なデザインのものには向きません。そこで、そういったことが得意なHoudiniを使い始めることにしたわけです。このソフトウェアには大変満足しています。

 

IZ:
Q10. その中で堀川様の現在のご職業をお聞かせ頂けますか?

堀川様:
私がいるのはゲーム業界ではなく、建築分野あるいは製品デザイン分野なので、新しいクライアントに会うときには自分自身を「建築プログラマー」と説明しています。私が行う仕事の大部分は、プロシージャルシステムを使って建築インテリアやファサード、製品設計のためのデザインと呼ばれるジオメトリを作ることです。また、建築家やデザイナーが製品をデザインするのに役立つツールを作ることもあります。

 

IZ:
Q11. 繰り返しになるかも知れませんが、今後Houdiniをどのようなことに使用していきたいとお考えでしょうか?

堀川様:
現在、特に建築デザイン業界でツールセットとしてHoudiniを使っている人はいませんし、その存在も気づいていないと思います。それでも私は主に実際の制作のためにHoudiniを使用し続けるだろうと思います。Houdiniはデジタルファブリケーションのためのツールにも使えると思いますし、実際のところ現在ボクセルデータを使用する新しいタイプの3Dプリンターの計画もあるという話も聞きます。もしこれが可能であれば、Houdiniのボクセルボリュームデータを直接3Dプリンターへ送り、各ボクセルが持つアトリビュートと一緒にプリントアウトするといったことができそうで、非常に面白そうです。

 

IZ:
追加の質問をさせて頂きます。
Q12. 堀川様の技術はゲームでも使える技術だと思うのですが、弊社(IZ)と一緒に今後ゲーム業界のお手伝いをしてもらえますでしょうか?

堀川様:
はい、私が普段いる業界とは異なりますが、ゲーム業界を経験してみたいとは思っています。ぜひお願いします。

 

お二人にご質問させていただきます。

IZ:
Q13.アーティストはプロシージャルとどのように向き合っていくべきか、お二人のお考えを伺いたいと思います。プロシージャルデザインやプロシージャルモデリングなど様々な用途が考えられますが、プロシージャルな手法をアーティストが行うことの利点、あるいはプロシージャルに対する個人的な捉え方、その両方について、ご意見をお聞かせ頂けますか?

Anastasia様: 
私が思う主な利点は、自身のワークフローを加速化することだと思います。自分自身のためのツールを作れることは非常にパワフルなことです。特に、私にとってプロシージャリズムは私自身のアートプロセスにおけるエンジニアリングを逆転させることのように感じているので、これまであまりよく考えずに直感的、本能的に行った判断について、なぜそのようにしたのか考え始めるようになりました。プロシージャル化できるようになって以降、自分が思ったものを思った通りに拡張することができるので、非常に興味深いです。それはまさに脳の一部を拡張しているかのように、究極なまで突き詰めることで驚くほどパワフルなものになるのです。まるで1つの建物だけでなく、何千もの建物を作れる感覚です。より高いレベルに行くことができます。木のパネルを10分間かけて1つずつ作成したり、手動での頂点ごとの作業に行き詰まることはありません。ノイズを割り当てるのは10秒程度でできるでしょう。このようなワークフローの加速化は素晴らしいと思います。

包括的プロシージャリズムについては、既に講演でも言及しましたが、条件付き芸術がライト、シェード、カラーの研究や知覚に関するものであれば、プロシージャリズムは、ルールやパターン、カテゴリの点からそのプロセスをどう考え研究するのか、また、どのように受け取るのか、アーティストへの挑戦だと思っています。そして、私はより多くのアーティストはプロシージャルプロセスを称賛すべきだと感じています。現在はどうなのか分かりませんが、以前はプロシージャルアートというのは非常にコンピュータっぽく見えてしまうという恥辱を受けていました。しかし私は、多くのアーティストがシーン作成を芸術の最終形態と見ていなかったことが理由だと思っています。より多くのアーティストがプロシージャルアプローチを行うことで、過去にありえなかった驚くべきアート作品を見られると信じています。

 

堀川様:
私が一緒に仕事をしている人々はアーティストではなく(建築や工業)デザイナー寄りなので、デザイナーがどのようにプロシージャルシステムに直面するべきかをお話しします。私は、特にプロダクトデザイン分野における建築デザイナーにとって、プロシージャリズムは不可欠だと思います。現在の作業はまるで職人のような手作業が多いので、例えばプロダクトデザイン分野でプロダクトをデザインする際、彼らはCADのような3Dのソフトウェアを使いますが、例えば車の設計であっても多くの行程は手作業(画面をみながら変形したいところをクリックしていく作業)です。そして、その後作ったジオメトリでモックアップを作成して構造的なストレスのテストを行います。その後テストの結果のフィードバックに応じてジオメトリを改変する過程を繰り返しますが、これは非常に時間がかかります。プロシージャルシステムをうまく利用できていないため、ジオメトリの作成を何度も行わなければなりません。全てではないですが、フィードバックを受ける度に一から行わなければいけない行程が非常に多いのです。そのため、そういったデザイナーがこの種のプロシージャルシステムをうまく利用できれば、設計時間を短縮できるのは間違いありません。

IZ:
この質問はすごく興味深いものがありますが、たぶん議論が尽きないと思いますので、次の質問に移りたいと思います。

 

IZ:
Q14.アーティスティック志向である方々にとって、数式などの数理的なアプローチを行うプロシージャルはとっつきにくい面があると思います。アーティストの方々がプロシージャルに対して最初の一歩を踏み出せるような何か良いとっかかりのようなものがあれば教えて頂けますか?

Anastasia様:
私が個人的に最も難しいと思っているのは、複雑な数式です。例をあげると、私が一番初めに作成したプロシージャルハウスの動画は、まるで煙突の家が集まったようなもので、それを実行したのは単一の数式だけでした。それなりに効率的でしたが、当時は単純なコードしか使えませんでした。Houdiniを使用するにあたって数式は不可欠なものだと多くの方は思うかもしれませんが、私はこれを1つのステップだと思っています。最初のステップとしては、プロシージャルなアプローチを理解すること、オブジェクトの階層を知ること、そしてそれをプログラムが実行可能なシンプルなアルゴリズムにすることだと思います。新しい数式を始める前に、その考え方を習得することが重要です。そのためには、Kim Goossens氏が提供するYouTube動画を視聴することをお勧めします。『Analysis and pre-work for procedural models』では、分類学とオブジェクトの分析プロセスについて説明しています。プロセスといっても、動画の中ではHoudiniや数式の話は1つも出てきません。彼は単純にどのように分析するかについて話しています。飛行機モデルについて、どのようにプロシージャルを分析するかを説明しています。私は、これはプロシージャルに興味を持った人なら誰もがとるべき第一歩だと思います。

回答をまとめると、アーティスト志向の方々がこの手法を習得するのは難しくないと思います。プロシージャルは数式ではないので、恐れる必要はありません。プロシージャルとはオブジェクトを分析することです。何かをモデリングしたり作成するときに、アーティストであれば誰もが既に日常的にやっていることであり、アーティスト的なプロセスと非常に似ています。プロシージャルは思考の切り替えが必要ですが、大部分は言及したとおりです。数式を学ぶことも非常に役立つので大切ですが、これはケーキに乗っているおまけのイチゴのようなものです。まず必要なのは、ケーキなのです。

堀川様:
私自身は数学があまり得意ではありませんが、私はどのようにプロシージャルシステムに慣れていったか私の個人的な体験をお話しします。私の以前の仕事の上司が、ジオメトリの設計に当時は珍しかったこの種のシステムを使用していました。私は幸運なことに彼と一緒に働く中で、実際の作業でプロシージャルシステムをどのように利用することができるのかということを体験することができました。その経験がなければ、私は今のように使用できるようにはならなかったでしょう。だから、私からHoudiniを使い始めたいと思っている人にできるアドバイスは、良いメンターを見つけることだと思います。あと実際に使用できるプロジェクトを手に入れるか、自分で作ってしまいましょう。そうすれば、使えないという言い訳はできなくなります。Houdiniを使わなければいけない理由を作ればいいのです。

Anastasia様:
切羽詰まった必要性を作り出すということですね!

 

IZ:
Q15.今後どのような分野にご興味があり、取り組んでいく予定でしょうか?

Anastasia様:
私が取り組んでいるのは、プロシージャリズムとディープラーニングの分野ですが、その探究の動機は、プロシージャルシステムにちょっとした逆の意味もあることを実感できたからです。自分自身や他のアーティストのために最適化されたプロセスを行っているとき、私達は何度も同じことを繰り返し、1つ1つのルールを全てゼロから作っています。創り出したシステムは、常に1つの事例に基づいています。もしも家の生成を基にした場合、それは家生成のための特定のスタイルになり、道路の生成であれば、道路向けのものとなります。他では活用できません。
そこで私の頭の中で疑問が生まれました。さらに掘り下げることはできるのか?プロシージャリズムのために何らかのプロシージャリズムを作り出すことができるのか?自身の効率化に向けて何かできるのか?プロシージャルアーティストがすべてのルールを手作りしなくても良い方法はないのか?高度なレベルのルールだけを作ることは可能なのか?他のシステムで低レベルのシステム構築を手助けすることは可能なのか?私はディープラーニングの観点から調査を開始しました。

IZ:
ありがとうございます。堀川様、いかがでしょうか?

堀川様:
個人的には、今まで作ることができなかったあらゆる種類のジオメトリを自分で作ることができるようになることに興味があります。あらゆる種類のジオメトリといったとき、それは自然のものでも、幾何学的な表現でも、どんな種類のものでもかまいません。そして今、私は人工生命、短く言うと生命の研究に興味があります。この研究では、人工的に生命を作り出す方法を模索しており、彼らが使っているプロセスはジオメトリ形状の作成という観点から見ても非常に面白いです。そのため現在この研究をのぞいてみて、人が最初から作成することができないジオメトリを作るこのプロセスに取り組もうとしていますが、例を挙げると、私は独自の環境(街かもしれないし絵かもしれない)を自ら構築するような人工的な生命を作ることができればと考えています。これが現時点での私の短期間的な目標です。

IZ:
ありがとうございます。あと4問になりました。
次からは、Houdiniについてお話を伺いたいと思います。

 

IZ:
Q16. お二人にとってHoudiniを使用して行く上で強みはどのようなものでしょうか?

Anastasia様:
一番の強みは、他のアプリケーションで簡単に繋げられないものを繋ぐことよって、創造性を切り開くことです。Houdiniは大きな魔法の呪文の本みたいなものです。小さな呪文を繋ぎ合せて、これまで見たことがない大きな呪文を作り出すように、Houdiniでは組み合わせ型の探求ができます。自己の目的に沿って、楽しめます。誰もが様々なものを接続できるので、そこが強みだと思います。

IZ:
ありがとうございます。堀川様は、いかがでしょうか。

堀川様:
私は主にHoudiniをジオメトリのモデリングツールとして使用しているので、その観点からいうと、Houdiniが持っている強力な利点は、これがメッシュ用のプロシージャルシステムであることです。GrasshopperのようなNURBSサーフェスベースのジオメトリを作るツールは別にありますが、Houdiniはメッシュに向けた多くの機能が実装されていて、 非常に複雑なメッシュ向けのジオメトリを作成することができます。もしそれでも充分ではない場合は、シンプルなスクリプト言語(VEX)を使って自分だけのための機能を作ることができます。また既存の機能を拡張することもできるため、非常にパワフルなツールです。

また、私はボリュームシステムも気に入っています。デジタル製作に対してでもあらゆる種類の目的にとって非常にパワフルです。そういった意味で、数あるモデリングソフトの中でも、自分の中では現在Houdiniがナンバーワンツールです。

IZ:
ありがとうございます。

 

IZ:
Q17.それでは、Houdiniに対して今後実装して欲しい機能はありますか。必要な機能、不足している機能はありますか?

Anastasia様:
私は、SideFX社が機械学習について何を追及していくか、そしてそれをHoudiniでどうするつもりなのか非常に興味があります。個人的に、Houdiniは合成データの作成において非常にパワフルなプラットフォームになると思っています。しかし今でもHoudiniの処理は十分高速です。例えばSEEDで行った検証では、リアルタイムラグで浸食を高速化しようとしたとき、シンプルな提携ネットワークを学ぶことによって、各フレームを数秒高速化させることができました。それが効率的なシステムであればどれほど素晴らしいかを考えました。Houdiniの力で何かを素早く組み立て、リアルタイムにすることで、Houdiniによる生産性が非常に強力なものになるでしょう。

堀川様:
ライセンスの問題だと思いますが、私が本当に望むのは、Houdini Engineプラグインの拡張です。そうすれば、コンパイルされたUnityゲーム内部でHoudini Engineを使うことができます。その場合、Anastasia様が先ほど言及したとおり、Unityとゲームエンジンの内部に専用データを作成することになり、拡張されればコンパイルされたゲーム内部でHoudini Engineを実行することができるので、新しい可能性が広がります。VRのドラフトやモデリングなどでも使うことができたら最高でしょう。

Anastasia様:
NHTVで作られていたプロジェクトでは、リアルタイムエンジンでHoudiniを走らせていました。おそらくコンパイルされたゲームだったと思うのですが、建物があり、VRでスライドを調整すると建物が変化していって、とてもクールでした。

堀川様:
そうですね、現在Unityエディタを使用している場合はエディタ内でも可能ですが、コンパイルされたゲームは新しいパラダイムのようになります。

 

IZ:
Q18. それではHoudiniについて、別の視点からお聞きしたいと思います。Houdiniをパイプラインとして捉えた場合、他のツールとどのように連携することが望ましいとお考えですか?

Anastasia様:
私は主にHoudiniをプロシージャルな配置に使用しており、エンジンにメッシュを送るだけなのですが、それにはとても適しています。アーティストはアセットを作成して、Houdiniで追加の立方体や球体を作成して、データをエンジンに結びつけるだけでよいので、チーム内の他のアーティストとの連携も簡単に取ることができます。ゲームパイプラインの一部としてHoudiniが本当に適しているのがわかります。

 

IZ:
堀川様、前の質問でUnityとの連携についてお答え頂きましたが、他に考えられるパイプラインはありますでしょうか?

堀川様:
現在の建築業界では、建物を管理するためにBIMを使用します。このシステムの中に、壁や天井、そして家具類などの建物に関する全ての要素の情報を入れます。また、このシステムでは、これらの家具、壁、窓などはパラメトリック、プロシージャルに作ることができるようになっています。そんな中、Houdiniをアセットの作成システムの1つとして使用することができれば、素晴らしいなと思います。

IZ:
プログラムを組むことで実現は可能でしょうか?

堀川様:
多分可能です。ただ、BIMのシステムは現在主にAutodesk RevitやArchicadなどが使われていて、どちらも独自のファイルフォーマットを使っています。そして残念ながら現時点ではまだ優れた統一フォーマットのようなものはありません。ですので、現時点で行うにはハードルが色々あるかと思いますが、将来実現できることを楽しみにしています。

IZ:
Houdiniをアーキテクチャービジュアライゼーションに使うということが、今後の可能性として有りうるということでしょうか?

堀川様:
そのとおりです。現在多くの人が既にビジュアライゼーション用に使用しています。

IZ:
ありがとうございました。

 

IZ:
Q19. それでは最後の質問になります。Houdiniを学習するにあたり、重要なことを、これから導入することを考えている人たちに向けて、アドバイスを頂けますでしょうか?

Anastasia様:
私の第一のアドバイスは、まずは易しいレベルから始めることだと思います。既に述べたように、Houdiniは大きな魔法の呪文の本なので、呪文を1つずつ学習し、使用方法を学んで試したり、組み合わせてどうなるか観察したりして、実験してみてください。それがHoudiniを学習する最も良い方法だと思います。Houdiniに関する資料はたくさんあります。例えばodforceフォーラム上にはあらゆる種類のファイルがあり、異なるノードをどのように使うことができるかが示されています。大体は小さく孤立した事例となっています。巨大なネットワークの中にあると圧倒されると思いますが、簡単に消化できるものとなっているので良いと思います。Houdiniをこれから始める全ての方に向けての私のアドバイスは、一度に一歩ずつ始めることです。圧倒されてしまうのは危険です。…一歩ずつです。

IZ:
Anastasia様に追加の質問をさせて頂きます。これからもチュートリアルを作っていく予定でしょうか?

Anastasia様:
そうすると思います。

IZ:
新しいチュートリアルを作ることを考えていると皆さんにお伝えしたいと思います。ありがとうございます。
堀川様、いかがでしょうか。

堀川様:
良い師匠を探して、仕事を探す。同じことです。私は昨日手始めとしてAnastasiaのチュートリアルをずっと見ていました。

Anastasia様:
難しすぎましたか?(笑)

IZ:
堀川様もたくさんのチュートリアルをYouTubeで公開されていますが、何かを始めるところのとっかかりみたいなものがもしありましたら教えて頂けますか?

堀川様:
Houdiniを使うためには、まず、英語を学ぶ必要があります。

Anastasia様:
第一歩、英語を学びましょう!

堀川様:
そしてジオメトリを作るためには、大好きにならなければなりません。よく観察して、分析して、動作を研究する。ジオメトリを充分に好きになれば…

Anastasia様:
ジオメトリもあなたを愛してくれる。

IZ:
それでは、素晴らしいご意見を色々とお聞きできたところで、質問を終えたいと思います。今日は、長い時間をいただいて、貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。