Houdini Procedural Artist セミナー Anastasia 様 ご講演の報告【第1部】


 今回は去る8月26日にワテラスコモンホールにて開催された、EA SEED部門所属のプロシージャル アーティスト Anastasia Opara 様及びアルゴリズミック・デザイナー の堀川 淳一郎 様をお招きして開催されたセミナーの内容について紹介します。
 この記事はAnastasia Opara 様の「多分野にまたがるプロシージャリズム:ディープラーニングとのコラボレーションの探求」講演の第1部:「プロシージャルデザインへのアプローチ」についての記事になります。こちらのパートでは、アートと知覚と、プロシージャリズムにおけるそれの役割についての説明でした。創造性と職人技、両方に関して話し、アートの歴史と生物学を大まかに説明されました。

 講演冒頭ではAnastasia様がどうやってアートを生み出しているか、そもそもアートとは何か、ということについて自己紹介を含める形で説明されました。アートとは、身近にある特化されたパターンにおける脳と知覚の探求であり、その中核は色と光、形の高次の知覚である、と説明されました。

 そして人間はコントラストの強い部分に脳が向くこと、視覚における認識は受動的なものではなく予測を含む能動的なものであること、そしてこれらを利用することで、見る人の感情的反応を誘発させることができる可能性について言及しました。

 人間の視覚による知覚は予測を含んでいるということは、同じモノを見ている人同士でも全く異なる知覚をすることがあるということになります。そこで人間は各々がこれらの知覚結果をカテゴライズして抽象化(つまり名前を付ける)することで、お互いの認識を共有しています。そこで逆にアーティストはこれを逆手に取り、利用してきました。

 

 そしてアーティストは階層的で因果関係のあるシーン描写を作るのがとても得意だとも仰られておりました。自分自身のこれまでの経験に基づきながらも、精神的に世界をありのまま表現することができ、かつ世界を想像することができます。そしてそれまで知られていなかった規則性を発見したり、分離されていたパターンをつなぎ合わせたりすることができる安全な環境こそアートではないでしょうか。と仰っていました。

 

 私たち人間は、非常に複雑で洗練された因果的思考モデルを持っています。プロシージャリズムはこのシステムの一片を抽出し、いくつかのつながりを固定にしたり、ランダムにしたりする行為を説明をつけることができます。私たちは自身の因果関係の知識をもとに、先に話したモノを「モノとして識別するための知覚」の本質を全てチェックしつつ、その可能性の分布を頭の中で作ろうとしています。

 私たち人間は脳の中に、プロシージャルな階層を持っており、因果モデルの一部を取り出すことができます。プロシージャルアーティストの目標はそのモノの確率空間をとらえることです。平均や偏差値などのパラメータの何をもってカテゴリが作られているのかを分析するのは非常に興味深いことであると説明されました。

 しかしこの際にまず用心したいのが、「一度に全てを解決しよう」とか、「大きな絵を作る前に細かいディテールにこだわりたい」といった誘惑に従わないことです。課題は可能な限りもっともシンプルな形になるように絞り、最小区分にまで分解します。そして機能的な階層として分離します。例えば、過去にAnastasia 様が参加された小さなHoudiniのワークショップにおいては次のようなエクササイズが紹介されました。

 これは一連のパターンで、約2-3個の概念の層をもっており、非常にシンプルです。例えば、このパターンではまずグリッドを作るところから始めます。そしてランダムな点をいくつか足して三角分割することで、不規則性を取り入れます。そしてDivideノードにあるとても素晴らしいオプション「Convert Dual」を使うとこのような結果を生みます。そしてConvertノードを使ってこれらのポリゴンからNURBSサーフェスを作り、滑らかさを得ることができます。

 パターンのようなシンプルなものから始めることが、プロシージャルな考え方の良い入門になるのではと考えています。視覚的な複雑性をシンプルな構成要素に分解して学びます。

 

 Anastasia様はHoudiniのノードのようにルールを積み重ねる行為を、呪文を作るような行為のようなものだと考えており、まるで自分が魔術師になったかのように感じるそうです。そのためには情報科学、生体工学などHoudiniを越えて知識を拡張するべきだと言われました。また、「人と話してアイディアを交換しましょう。腐らず、皆様の魔術書を豊かにしていきましょう。」と仰っておりました。

 呪文を作る上での一つの最適な方法としては、一つの問題を解くのに複数の方法で試して見ることだそうです。Anastasia様がCG Master Academyで「VEX in Houdini」を教えていた時、常に複数の解法を持つことを推奨していたそうです。一つの問題に対してより多くの解決方法が考えられれば考えられるほど良いとしました。そしてその解決方法はどんなに常軌を逸していても良く、重要なのは可能性を探求したかどうかで、効率性の頂点に立っている必要はありません。と仰っておりました。

以上が第1部の内容になります。第2部は「Houdiniを使用したディープラーニング」についての内容となります。